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執筆者の写真Maretsugu Furugen

沖縄らしさと屋根獅子

 仕事の打ち合わせでよく「沖縄らしい風景の写真」をお願いされる。多くの人にとって沖縄の風景は自然の海、空、緑、今の時期は濃い色をした桜で、街は細い石畳みの道に赤瓦屋根の木造建築の家屋でその赤瓦の上に屋根獅子(シーサー)がいるイメージを浮かべる人も多いと思う。他にも様々な沖縄の風景はあると思うが、その中で僕にとって赤瓦と屋根獅子は最も身近にある「沖縄らしさ」だった。 

屋根獅子は庶民が瓦葺をゆるされた明治時代に普及し、多くは瓦職人が魔除けとしてまた、家主へのお礼として漆喰で作られた。今では陶器製のものが多くなった。 

漆喰で作られた屋根獅子は個性的なものが多く家を守るには少し愛らしいのが多い。獅子は作った人に似てるといわれているのできっと職人に似ているのだろう。 

沖縄の観光事業が隆盛を極める中、多くの人々が沖縄の自然・文化を求めてきた。それに応じて沖縄は変わり進化してきた。けどそれと引き換えに屋根獅子も瓦葺の家屋が少なくなり自宅のベランダから望む風景は赤瓦どころかセメント瓦さえ見ることがない。 

限られた地に大勢の人々が集まると横に広がるのは限界があって、 

建物は鉛筆を立てた様な集合住宅になり、土地は規律的な直線で分けられ人の住む場所は上へ上へと伸びていき広さを感じた空を覆いその周りは壁に囲まれ窮屈で息苦しい感じだ。屋根獅子は少なくなり今は門獅子が多くなってきた。 

写真を本格的に始めたころ何を撮りたいかを考えたときに頭に浮かんだのは「沖縄」で、誰が見ても屋根獅子と赤瓦は沖縄とわかる風景だった。屋根の上にいて、触ることができず見上げることしかできない屋根獅子の存在は僕にとって神秘的で撮るにふさわしいと感じていた。 

毎日カメラを持ち歩いて屋根獅子を撮り歩いていた。その後なかなか時間がとれず仕事が忙しくなりやめてしまったが昨年、獅子を作成している与那原の陶工を取材したことを機にまた撮り始めた。実に20年ぶり。カメラもフィルムからデジタルに変わり機材も望遠レンズが増えて撮りやすくなった。失われたものはもう見ることはできないが写真の記録性は時間を超えてゆくものと信じているので撮ってさえいればいつでも見ることができる。今後は「沖縄らしい」風景写真を整理し、それをインターネットで多くの人に見てもらえるようにしたいと考えている。



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